観劇日記 最強の一人芝居フェス「INDEPENDENT」2021/03/23

Twitterで旧知の役者の出演情報を見つけ、衝動的に観劇。


~ INDEPENDENT、とは? ~

2011年於全国ツアー以来、各地で”地域版”が開催され盛り上がりを見せている大阪発”最強の一人芝居フェスティバル”。2020年5月開催予定をコロナ禍で延期しリトライ!本家大阪公演で好評を得た招聘2組を道内4作品が向迎え撃つ!

(以上、フライヤーより抜粋)

・・・と、いうことのようです。

今回は上述の通り6作品を3作品ずつの2ブロックに分けての上演。僕はBブロックを観劇。久々の今コンカリ、久々の観劇。


~ 以下、雑感 ~


1.「かさぶた」 

 出演 ひらりそあ
 脚本・演出 竹原圭一

お二人ともRED KING CRAB所属。同劇団についてはHPをどうぞ。
( https://redkingcrab.wixsite.com/redkingcrab )


(1)ストーリーを簡単に。

本番前、楽屋、鏡前に一人佇む役者。

主役を降ろされた(と主張する)この役者が、後輩と思しき役者とメイクを施しながら、出演シーンを返し(練習し)、他の先輩と思しき役者の指摘や指導を受けている。

そこに、父の現在のパートナーと思われる女性が楽屋見舞いに現れる。芝居を生涯の目標に選んだが故に生まれた父との距離、親子故の愛憎、シーンの展開とともに虚勢を一枚一枚はがされるように努力が報われない役者の悲哀があらわになり、孤独が描かれていく。

(2)脚本?演出?

蕎麦屋の老店員がメインなのに女性の楽屋に役者少なくない?
本番前のメイク中にお客様?
疎遠となった父の後妻で父は入院中で父は70代くらい?
老店員を演じる娘はいくつ?設定は30代後半も後半?
演じてる印象若すぎ?20代が30代前半を演じてます状態?

気になる・・・

(3)演出?役者?

上述のずれというか狂いというか違和感というか、そういうものがあるために発生した戸惑いが、役者と役柄に対する印象がしっくりこないまま。

(4)それでも「30分間」の印象が「早い」

うまい役者ではありましょう、時間の経過が早かった。
時間の経過が早い理由は、戸惑いにあれはゝこれはどうと考えても早くはなるけど。

どっちなのかな、今回のは。



2.「遊泳」

 出演 千田サトミ
 脚本・演出 渡辺たけし

(1)ストーリーを簡単に

75年周期で集会し続けるハレー彗星の尾っぽに地球が飲み込まれる日、重力と空気がなくなる。その日のためにトレーニングを続ける。息を5分間止める。息を止めて。ねえ、どうして一緒にやってくれないのメリーさん。どうして?どうしていつも言うことを聞かないの?!児童相談所から面会の電話がくる。来週、来週、来週・・・。彼から電話がくる。ごはんにこんにゃくを混ぜると太らないの。太らせないの。そう、太らせないようにしなければいけないの、彼のいいつけどおりに。
どうして、ねん、どうしていうことを聞かないの?!・・・動かない、メリーさんが動かない・・・どうしたら、どうしたらいいの?教えて携帯。ねえ、教えて携帯!ダレカ、ダレカオシエテ!

(2)時事が刻々と表現されてはいる脚本だが

怖いなぁ・・・脚本・・・。
怖いんだけど、不条理化、抽象化することで現実世界と距離を置いている。単に時事を脚本化して問題視したり疑問を投げかけているわけではないものに仕上げている。このあたりはうまいなぁ、と率直に思う。
誰かに縛られ、ありえない空想話を妄信し、子供を死に至らしめる狂気。
物語として観ようとすると即座に足元をすくわれる構成は、好みの分かれるところではある。ベケットや別役実がお好きな方にはお勧めしやすいのではなかろうか。

(3)そういえば、狂気の役者だった

「千田サトミ」さんとは同じ劇団に所属していたことがある。セリフが聞こえないほどの早口でも、滑舌の良さからリズミカルに聞こえる。セリフはもっとはっきりと聞きたいところだが、たぶん演出によるものだろう。
それにしても、よくもまああれだけのセリフを覚えたものだ、僕には不条理劇としたとらえられないこの脚本を。
狂気にすぎるシーンがあった。狂気を狂気のままに演じることができるのが、この役者であった・・・多分本人は狂気とも何とも思っていない気がするが。
脚本・演出の「渡辺たけし」さんのことを多分僕は知らないが、このふたりは旧知の仲なのではなかろうか。この脚本を演じるにはうってつけの役者であることは間違いない。彼女以外は脚本に疑問を抱き、表現に過不足が生じると考えられる。

(4)正直なところ・・・

脚本はあまり好きではない。過去にベケットのホンで演出したことがあるにも拘わらず、ではあるが。
演出はほんのちょっとだけテンポを変えると見やすいだろう。演出の意図するところとは違う可能性はあるが。
役者は見ごたえがあり、他に同じようなタイプは見当たらない。

好みの分かれる30分の一人芝居、だということだろう。

そして僕は、脚本はともかく、この役者を観たいとずうっと思っていたことに改めて気づいている。


3.「ミミクリ」 ※大阪招聘作品

 出演 近藤ヒデシ
 脚本・演出 成田竜治

(1)ストーリーを簡単に

今から2300年ほど前、食客3,000人を抱えていたといわれる孟嘗君が、他国の王にその命を狙われる危機に陥った。その危機を救ったのが、食客の二人。他国の王への献上品を欲しがる妃の口添えを得るために献上品を盗んだ盗人、天下の関・函谷関を鶏の鳴き声で朝を告げて開門させた物まね上手、これをして鶏鳴狗盗という、との故事がある。

世界史に物まねで記録された物まね名人にあこがれる、物まねによる故事の紹介タイム。

(2)面白いことは面白いが

物まねが演劇感を薄めていることに、残念な気持ちを覚えてしまった。これはこれで芝居なのだが、物まねの出来具合みたいなものをついつい追ってしまう自分がいた。

いや、世界史に唯一刻まれた物まね名人のことを(多分)リスペクトして、一人芝居として作り上げてるのだから物まねが多用されているのは脚本としてのテーマだろうし、ただただ僕の視野が狭いだけなのだが。

(3)すこしだけ丁寧に、少しだけ地に足をつけて

印象の部分かもしれないけど、物まねに力が入ってたり自信があるせいだろうか、芝居よりもパフォーマンスのほうに近寄った作品との印象を持っている。そのために、演じ分けた登場人物同士の関係性に少々の狂いがあるように感じた。

A 「おい」
B 「へぇ」

AとBの心理的関係はセリフとしぐさで演じ分けられよう。
同じように、

A 身長160cm
B 身長180cm

AとBの物理的関係もセリフとしぐさで演じ分けられよう。
今回の舞台では、言ってみればAとBの視線が狂うんですな。

某新聞社の自社広告も、同じ状況に陥っている。
仕事仲間?ビジネスパートナー?の男女の視線がすれ違っている広告をこの2年くらいだろうか、否応なく目に入ってくる。身長差のある男女をそれぞれ撮影して、サイズを修正して合成したのだろう。ふたりとも空(くう)を見ているようにも見える。

こういう違和感を感じたし、もっと高い完成度を求めてしかるべき役者、脚本だと思った。


~ 以上、雑感 ~


やはり劇場はいいですな。
機会をつくって、観劇雑感と洒落込みたいです。


追伸、
感染症対策、勉強になりました。